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永瀬 義郎

永瀬義郎は、大正から昭和にかけて、日本の版画界に「エロティシズム」と「象徴主義」という官能的な風を吹き込んだ異色の版画家です。彼は長谷川潔らと共に、日本独自の版画表現を追求するグループを結成し、伝統的な木版画を「精神の解放」のための手段へと一変させました。
永瀬の画業を象徴するのは、柔らかな曲線で描かれた女性像と、その背景に漂う退廃的で詩的な雰囲気です。彼の彫刻刀は、単に対象を写し取るのではなく、人間の内面に潜む情熱や孤独を、版木の荒い目やインクの滲みを通して描き出しました。特に、彼の描く女性たちは、当時の日本画や浮世絵のような様式美から脱却し、より生々しく、西洋の近代美術に近い肉体美と感情の揺らぎを湛えています。この作風は、竹久夢二にも通じる抒情性を持ちながら、より深い精神的な暗部や官能性を見つめたものでした。
永瀬 義郎