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笠松 紫浪

笠松紫浪は、大正・昭和・平成の三代にわたって活躍した版画家で、新版画を代表する風景画家の一人です。彼は13歳の若さで清方に入門し、同門の巴水や深水らと共に切磋琢磨しました。

大正8年に渡辺庄三郎から「青嵐」を発表して以降、戦前にかけて渡辺木版から数多くの風景版画を世に送り出しました。彼の作風は、巴水の静寂とは対照的に、街の賑わいや人々の息遣い、そして光と影の強いコントラストを活かした動的でモダンな表現に特徴があります。特に雨や夜、霧といった気象条件をドラマチックに描き出すことに長け、東京の街角や温泉地の情景を温かみのある色彩で表現しました。

昭和20年代後半からは、芸艸堂からも多くの作品を発表した後に創作版画の手法も取り入れていきました。晩年まで旺盛な創作意欲を持ち続けた彼は、新版画の華やかさと創作版画の芸術性を高い次元で融合させた稀有な作家といえます。