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伊藤 総山

伊藤総山は、明治末期から昭和初期にかけて活躍した日本画家・版画家で、渡辺庄三郎が提唱した新版画の最初期を支えた重要な絵師の一人です。

彼は、新版画という言葉が生まれる以前の大正初期から渡辺版画店と組み、黎明期を担いました。特に花鳥画において抜きんでた才能を示し、柳に飛び交うツバメや、月夜のミミズク、水辺のサギなどを、伝統的な浮世絵の枠を超えた写実的かつ情緒的なタッチで描き出しました。

総山の作品の特徴は、余白を活かした静謐な画面構成と、繊細な色彩のグラデーションにあります。総山の作品は大正らしい、どこか物静かで気品のある和の情趣が強く漂っています。また、風景画や美人画も手がけており、特に美人画では、当時の日本女性のたおやかさを優美な線で表現しました。

昭和期に入ると、日本画家としての活動に比重を移していきましたが、大正という新しい時代の息吹を木版画に吹き込んだ功績は極めて大きく、海外でも彼の花鳥画は高い人気を誇っています。
伊藤 総山